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生まれてきてくれてありがとう!大好きです!ツナが!(え)


続き鏡の檻でひばたん。二人がくっつく前です。初代様の時代がいつなのか正確にはわからないのでもしかすると時代背景がおかしいかもしれない。
・・・誕生日なんだからどうせなら甘いのかけよって話。
伝えたいことを上手くかけないときというのはかなり多いですが力不足を感じて悔しい。



「誕生日?なにそれ」
故意に促した話の流れでその単語が出たとき、異国からやってきた男は怪訝そうにした。はじめ、何が疑問なのか伝わらなかったぐらい予想外の反応だった。
「お前の土地にはないのか?」
「個人の生まれた日を祝う風習はないね。僕らの国では年が明ける日に全員が年をとる」
絶句である。この国から出たことのない人間にとって、驚きだった。なぜなら特別地域で差がでる種類の祝日ではないのだ。どこにでもあって当然という意識があった。
「それでは同じ年齢でもかなり差が出てしまうのではないか?」
「そうかもね。でも、効率的でいいんじゃない」
雲雀からしてみれば自分の誕生日もどうでもいいことだし、いちいち個人で祝うのも手間がかかるだろうと思う。何より煩わしい。年をとるのに特に感慨はない。
「ではお前は自分がいつ生まれたのか知らないのか」
「特定の日付は――・・・・・・ああ、そうでもないか。聞いた事がある。端午の節句の日だったとか」
「タンゴノセック?」
「故郷の風習だよ。男子の成長を祝って健康を祈る日でね、魚の形をした布やら防具なんかを飾ったり特有の餅を食べたりする」
「ほう」
世の中には色々な風習があるものだ。何故魚なのか魚の形の布がどんな見た目なのか想像できないが、あたり一面魚だったらそれはそれでなかなかにすごい光景のような気がする。
(いや、違うききたいのはそうじゃなくて!)
事前に会話のシミュレーションまでして聞き出そうとおもったのはそこではない。
「それで?その日はこちらの暦に合わせるといつなんだ」
「五月五日」
「そうか五月――・・・・・・」
そこでふとひっかかる。五月五日?脳内にカレンダーを思い浮かべた。
「今日じゃないか!!!」
「?――ああ、そういえばそうだね」
雲雀はむしろその慌てようさえ不思議そうにあっさりと頷く。それがどれだけ目の前の人間を絶望させているのかにも気づかずに。
(なにも用意できてない・・・・・・)
そんなのありだろうか。少々ジョットらしからぬ叫びをあげてしまったことにも気づかず落ち込む。
事前に知っていたところで、『自分』として彼に何かを渡すことは叶わない。祝いの言葉も、プレゼントも、所詮それは『ジョット』からのものとなるのだ。自分ではなく。それが辛くて、嫌だと思うくせに、それでも彼の誕生日は知りたかった。祝いたかった。

生まれてきてくれて、本当に嬉しいのだと言いたかった。

辛いのに、彼がこうして今傍にいることが嬉しい。声をかけてもらえて、聞けて、こんなにも幸せな気分になる。胸がいっぱいになって、気を抜けば息がつまりそうになるぐらいに尊いと思う。
必死でその想いを隠しているけれど、誕生日なら。少しぐらい祝ったっておかしくないんじゃないかと。馬鹿なことを考えた。
そんなことをしてしまえば彼に余計な期待をもたせて、いたずらに傷つけるだけで。でも祝いたい。どちらを選んでいいかわからなくなった。
唇を噛み締めないよう我慢しながら、ゆっくり聞こえないように深呼吸する。
「・・・・・・悪いな、何も用意できていないぞ」
明るく振舞え。からかうんだ。少しだけ残念そうに、だが悲しさなんて押し隠せ。
心臓が痛い、顔がゆがみそうになる。
「後日でいいなら何か―――」
「いいよ。元々僕にはそういう風習はないんだから」
そういわれてしまうと言葉はないけれど、その風習の中で生きてきた自分にとってはどうしても気にかかってしまう。
「君が気にすることじゃない」
普段傍若無人のくせに、他人を気にしたりなんかしないくせに、たまにこうして気づかいを見せるなんてずるい。彼が贈り物を断る理由に、わずかでも自分への想いがあるとするならば。例えジョットに向けられたものであろうと、自分を見ていてくれたことが嬉しくて嬉しくてしょうがなくなってしまう。
ほぼ無意識、勝手に身体が音を発した。


「――お前が生まれてきた日を嬉しく思うよ、アッロドーラ」


彼は目を見開いた。数秒は固まって、そのせいで正気に返る。
その瞬間、激しい後悔にみまわれた。なんてことを。罪悪感が胸を襲う。完全なる自分本位な行動だった。彼の前で理性がまともに働いた覚えがない。
その自己嫌悪さえどうでもよくしてくれる人はいつだって同じだ。

「君は?」
「は?」
「だから、君の誕生日とやらはいつなんだい」

少し照れ隠しのようにむすりとした表情で、不機嫌そうに、なのにそんなことを雲雀は口にする。
言葉を失ってしまった自分に焦れて、もう一度雲雀がいつ、と促す。ほぼ唖然としたまま答えた。
「あ、ああ。10月の、14日・・・・・・」
ジョットと双子で本当によかったと思う。何も、嘘を教えずにすむ。これはジョットの生まれた日でありながら、本当に自分自身が生まれた日でもあった。きっと彼はこの日を覚えていてくれる。ジョットとしてだろうと、知っていてくれるだろう。自分が生まれた日を、もしかしたら良い日だと、少し、ほんのわずかぐらい思ってくれるかもしれない。
「そう」
きっと彼を知らない人間にはわからない。雰囲気が少しだけやわらかくなって、それに胸が震える。

ねえ、それはどういう意味。

期待と、嬉しさと、自嘲。
答えがえられるその日を焦がれた。
それまで隠し通せるだろうか。この関係は続いているだろうか。どうかそうであってほしいと。そんなことを、なんでもいい、何かに祈りたかった。



FIN.

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