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ツナ誕生日おめでとう。というわけで続き。



『どこ』
その言葉が指すのは物ではない。
彼が探しているのはジョットの妹であり、何の因果か彼の恋人であるツナヨシだ。今日がジョットにとって祝いの日であることを知り、それがつまり彼女にとっても喜ばしい日であることを推測したのだろう。珍しい仕事以外の来訪に、そう結論付ける。


――そう、今日はツナヨシがこの世に生を受けた日だ。


そんな日に立場上、一人にしてしまうことをジョットは心底悔しくてならなかった。影武者が本来の役職であるツナヨシの存在は隠されなければならない。おおっぴらに共に祝ってやる事は叶わなかった。本人は特に気にしていたわけでもないようだが、毎年、明るい光の下でジョットの胸を襲うのは陰鬱とした何か。
同じように生まれた。
同じように生きてきた。
望む望まないに関わらず、選択肢は他にありはせず。
自分がこうして生まれてきた日を家族達に祝われている今この時まさに。彼女はたった一人。

そう、ほんの一年前までは。

それもこの年からは違うのだろう。だからこそ、今、いや、この男の目的を理解したその瞬間から、ジョットの胸のあたりのつかえがとれ、解放されたようにすっと息が楽になる。あふれ出すのは歓喜だろうか。

彼はきっと、ただ一人。あの存在にだけ、存在する事に対してだけ祝福を与えるためにいる。

彼女は、己に必要な存在を、己の手で手に入れたのだ。
それに安堵を覚えてしまう己が、罪悪感が薄れてしまう心が、ひどく滑稽だ。
「さっさと答えないとこの会場ごと壊すよ」
「・・・・・・・・・・・・・まったくお前は」
しかし、そもそも今日は誰にも知られぬ(目の前の男を除き)彼の妹だけでなく、双子であるジョット本人だってもちろん、誕生日にあたる。だからこうしてファミリーに祝われているわけだし、そういう席だって設けられたのだ。目の前の男が自分の誕生日祝いをしにきてくれるなどと天地がひっくり返っても想像していなかったが、さすがに不機嫌そうな怒りをぶつけられるのは御免こうむりたい。
ふう、と呆れた溜息を零して、側近達に一言断ってから彼の男に近寄る。

「――自室だ。以前私が呼び出した部屋の真上から左に3つ目の部屋。これからの仕事はないから、数日くらいなら連れ出しても構わないぞ」

他の誰にも聞こえないような囁き。



まだ続くらしい。
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